市街地近くに作られた札幌ドームの人工の緑地に、開発前の1.5倍の種類の野鳥が集まっていることが分かった。豊かな生態系を作り出すため、周辺の環境 を分析して「鳥の目線」で鳥が集まりやすい草木の種類や配置を考えた。昆虫の種類もチョウが3倍、トンボは4倍ほどに増えていた。生態系に配慮した大規模 開発で、その変化が確認されたのは珍しい。
札幌ドームは、農業試験場だった31ヘクタールの敷地を開発、2002年のサッカーW杯に先立ち、01年に完成した。ドームと屋外に、野球とサッカー共用のアリーナがある。
調査は、鳥の繁殖期(6~8月)に専門家が敷地内を歩いて目視で行った。建設前の1997年と、完成後の01~03年、今年のデータを比較した。
その結果、開発前の97年に23種、01年に18種まで減った鳥類が、今夏は36種確認された。広い草原を好むヒバリや、草原で狩りをして樹木で眠るモ ズなどが繁殖に訪れている。水辺を好むカワセミや、樹林で暮らすヤマガラも、建設前には見られなかったが、飛来するようになった。
鳥が集まりやすくしたポイントは、あらかじめ建設地と周辺の環境とのつながりを調べ、生態系の潜在力を分析した点。周囲10キロ四方の土地の緑の量、周 りで見られる鳥類などを調査。200メートル四方ごとに「市街地」「樹林」「樹林と草地のモザイク」などいくつかの型に分類し、周囲から無理なく鳥が飛ん でこられる環境を検討した。
その結果「樹林と草地のモザイク」が最も適していると判明。呼び込む鳥の種類を決めて、鳥が好む樹木や草花の種を植えた。草の種が絶えないよう、刈り取る茎の高さや時期に配慮して管理した。鳥の餌となるチョウやトンボなどの昆虫も増えてきているという。
都市の環境保全などに詳しい生態計画研究所の小河原孝生所長は「もともと周辺にいない鳥を目標にしても意味がない。周囲の生態系を考えて植栽すれば、コ ストを抑えて効果が得られる」と指摘。日本野鳥の会普及教育グループの大野敦子さんは「グラウンドなどを建設すると広い土地を好む野鳥は集まるが、種類は 少なくなる。森林や水辺を好む鳥が10年間で定着したのなら環境が成熟しているといえるだろう」と話した。
asahi.com(朝日新聞社):鳥の目線で植栽したら生態系豊かに 札幌ドーム人工緑地 - サイエンス